映画「時をかける少女」

スタッフ

監督:谷口正晃

1966年7月6日、京都生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。89年、卒業制作の短編『洋子の引越し』がぴあフィルムフェスティバルで、最優秀16mm賞と最優秀男優賞を受賞。審査員の大林宣彦監督らの高い評価を得る。その後、同フェスティバルで出会った篠原哲雄監督に師事し、助監督を始める。根岸吉太郎(『乳房』・93年)、滝田洋二郎(『熱帯楽園倶楽部』・94年)、橋口亮輔(『渚のシンドバッド』・95年)、篠原哲雄(『月とキャベツ』・96年)、平山秀幸(『愛を乞うひと』・98年)、井筒和幸(『ビッグ・ショー!ハワイに唄えば』・99年)、冨樫森(『ごめん』・02年)、黒木和雄(『美しい夏キリシマ』・03年)といった、監督の現場に参加。05年、オムニバスドラマ「min.Jam 学校の階段」の二編を初監督。主演に堀北真希らを迎え、恋に揺れる女の子の感性を瑞々しく描く。そのほか、浜田省吾のコンサート用短編『初恋』や、ドラマ「週刊 赤川次郎」(テレビ東京系)の一編「青春の決算」、ソニーのデジル・シネマ・カメラF23のプロモーション用短編『紅い灯』を監督。本作が劇場用長編初監督作となる。

脚本:菅野友恵

大学卒業後、アシスタント・プロデューサーとして、宮崎あおい主演『初恋』(塙幸成監督・06年)のほか、北川景子主演『チェリーパイ』(井上春生監督・06年)のcinemusicaシリーズに携わる。また、仲 里依紗出演のNHKドラマ「WILD LIFE~国境無き獣医師団RED~」の製作に参加したほか、「週刊赤川次郎(代筆)」(テレビ東京系)にて脚本を手掛ける。今作が初の長編映画作品となる。

撮影:上野彰吾

1983年、日活撮影所に入社し、撮影部所属となる。その後、篠原哲雄監督と『草の上の仕事』など自主映画を製作。94年、『東京デラックス』(崔洋一監督)で劇場映画デビュー。『月とキャベツ』(96年)、『天国の本屋~恋火』(03年)、『地下鉄(メトロ)に乗って』(06年)などの篠原哲雄監督作のほか、『ハッシュ!』(橋口亮輔監督・01年)、『星に願いを。』(冨樫森監督・02年)、『象の背中』(中坂聡監督・07年)、『ぐるりのこと。』(橋口亮輔監督・08年)、『青い鳥』(中西健二監督・09年)、『ちゃんと伝える』(園子温監督・09年)などを手掛ける。

照明:赤津淳一

1983年、日活撮影所に入社し、社員照明助手として従事。90年に退社するまで、森田芳光監督作など、さまざまな作品を手掛ける。以後、フリーの照明チーフを経て、『さわこの恋1000マイルも離れて』(村上修監督・93年)で照明技師デビュー。その後も、さまざまな作品を手掛け、近年は『東京フレンズ・ザ・ムービー』(永山耕三監督・06年)、『地下鉄(メトロ)に乗って』、(篠原哲雄監督・06年)、『象の背中』(井坂聡監督・07年)、『BABY BABY BABY!』(両沢和幸監督・09年)などを担当。

録音:小川武

1983年、日活撮影所に入社し、社員照明助手として従事。90年に退社するまで、森田芳光監督作など、さまざまな作品を手掛ける。以後、フリーの照明チーフを経て、『さわこの恋1000マイルも離れて』(村上修監督・93年)で照明技師デビュー。その後も、さまざまな作品を手掛け、近年は『東京フレンズ・ザ・ムービー』(永山耕三監督・06年)、『地下鉄(メトロ)に乗って』、(篠原哲雄監督・06年)、『象の背中』(井坂聡監督・07年)、『BABY BABY BABY!』(両沢和幸監督・09年)などを担当。

美術:舩木愛子

アシスタントとして『PARTY7』(石井克人監督・00年)、『恋の門』(松尾スズキ監督・04年)、『タイヨウのうた』(小泉徳宏監督・06年)などの作品を手掛けるなか、02年『Jam Films(けん玉)』(篠原哲雄監督)でデビュー。その後も、『TOKYO!〈インテリア・デザイン〉』(ミシェル・ゴンドリー監督・08年)など、さまざまなショートフィルムの美術を担当。本作が長編映画デビュー作となる。また、CMや舞台、宇多田ヒカルを始めとするアーティストのPVも手掛けている。

編集:宮島竜治

96年に『ロマンス』(長崎俊一監督)で編集マンとしてデビュー。その後、05年の『スウィングガールズ』(矢口史靖監督)と、06年『ALWAYS 三丁目の夕日』(山崎貴監督)で、日本アカデミー最優秀編集賞を受賞。主な作品に『天然コケッコー』(山下敦弘監督・07年)『ハッピーフライト』(矢口史靖監督・08年)、『ディア・ドクター』(西川美和監督・09年)、『BALLAD 名もなき恋のうた』(山崎貴監督・09年)などがある。

音楽:村山達哉

スタジオミュージシャンを経て、作曲・編曲家として多くの作品を手掛ける。代表作にTVドラマ「眠れる森」「週末婚」、映画「命」「木曜組曲」など。並行してピチカートファイブ、斉藤和義など多くの多くのポップス作品も手掛けている。また、新しいタイプのポップオーケストラ“TOKYO GRAND ORCHESTRA”を主宰するほか、06年には音楽を大事にした、新しいタイプの映画“cinemusica”を立ち上げている。

衣裳:宮本茉莉

福岡県出身。黒木和雄監督による『美しい夏キリシマ』(03年)、『父と暮せば』(04年)ほか、『OUT』(平山秀幸監督・02年)、『カナリア』(塩田明彦監督・04年)、『フライ,ダディ,フライ』(成島出監督・05年)、『ルート225』(中村義洋監督・06年)、『あの空をおぼえてる』(冨樫森監督・08年)、『なくもんか』(水田伸生監督・09年)などを手がける。今後の公開作品としては『彼岸島』(キム テギョン監督・10年)を予定。谷口監督とはデビュー作である、ショートムービー『学校の階段』(05年)以来、2度目のタッグとなる。

ヘアメイク:横瀬由美

1987年、ヘアメイク・小沼みどりの助手に就き、91年に独立。その後、『Lie lie Lie』(中原俊監督・97年)、『カンゾー先生』(今村昌平監督・97年)、『龍馬の妻とその夫と愛人』(市川準監督・02年)、『七夜待』(河瀬直美・08年)、『TOKYO SONATA』(黒沢清監督・08年)といった作品を担当。映画のほかにも。TVドラマやCMのヘアメイクも手掛ける。

VFXスーパーバイザー:小坂一順

1998年、株式会社オムニバス・ジャパンに入社し、『陰陽師』(滝田洋二郎監督・01年)や『イノセンス』(押井守監督・04年)などのコンポジット(合成)スタッフとして参加。05年、TVドラマ「GARO~牙狼」にてVFXスーパーバイザーを担当。そのほかの作品に、『そのときは彼によろしく』(平川雄一朗監督・07年)、『デトロイト・メタル・シティ』(李闘士男監督・08年)、『僕の初恋をキミに捧ぐ』(新城毅彦監督・09年)などがある。

ページのトップに戻る

原作者コメント

原作から半世紀?。
    懐かしい昭和の時代を彷徨する娘の、
    母の恋を再体験する
    輪廻の物語として生まれ変わった。 
    筒井康隆

原作:筒井康隆
1934年9月24日、大阪府生まれ。同志社大学文学部で美学芸術学を専攻し、卒業後展示装飾を専門とする会社を経て、デザインスタジオ設立。60年には、SF同人誌「NULL」(ヌル)を発刊し、当時の推理小説界の最長老・江戸川乱歩に認められ創作活動に入る。主な著書に「時をかける少女」「家族八景」「大いなる助走」「虚航船団」「残像に口紅を」「文学部唯野教授」「筒井康隆全集(第一期)24 巻」などがある。また、文学賞の受賞歴としては、81年「虚人たち」(泉鏡花文学賞)、87年「夢の木坂分岐点」(谷崎潤一郎賞)、88年「ヨッパ谷への降下」(川端康成文学賞)、92年「朝のガスパール」で日本SF 大賞を、「わたしのグランパ」で読売文学賞を受賞。02年には、紫綬褒章を受章している。

ページのトップに戻る

1983年度版「時をかける少女」 大林宣彦監督/寄稿

遠い昔の“殉愛映画”が甦る。ー 新版製作の皆さんに拍手を。

昔ぼくが作った『時をかける少女』は、ぼくの映画の中で最も愛された一本だろう。27年前の当時の邦画動員記録だったし、この映画の撮影地・尾道にはロケ地巡りの旅人が毎日列をなして、芳山和子が暮らした家や原田知世が駈けた小路を訪ね歩いた。今でも『時をかける少女』を訪ねて尾道へ行ってきました、と楽しそうに仰るおじさまやおばさまに年中逢っているし、当時この映画を含め、“尾道三部作”と呼ばれたぼくの『転校生』、『さびしんぼう』と共に、この映画を見たのが切っ掛けで映画やテレビの製作現場に入ったという人もとても多い。今度の新しい『時をかける少女』を作った人たちもそのようで、「中・高校生の頃『時をかける少女』を見て夢中になって、いつか自分たちもこんな映画が作れたらと思っていました。大林さんへのオマージュが一杯ありますので是非見て下さい」と誘われて、プロデューサーを務めた妻と二人、いそいそと試写に出向いた。心配半分、が正直な所でありましたが、結果は大満足。ぼくたちにとっても、きっと昔のファンにとっても、嬉しい自慢の『時をかける少女』となりましたね。

『時をかける少女』といえば、まずは芳山和子、即ち原田知世であります。4年前の細田守監督のアニメ版だって、主人公は新しいキャラクター・紺野真琴を創造し、今の時代のお話に置き換えられてはいたが、昔の芳山和子がちゃんと伯母さん役で登場し、その御蔭で現代の新しいファンのみならず、昔のファンまでに話題が広がり、大ヒットに繋がった。細田君は芳山和子役の声優に原田知世を墾望したそうだが、(結局実現はしなかったが)その“想いが”ファンの胸を叩いたのでしょうね。今度の谷口正晃君のものも主人公は芳山あかりなる芳山和子の娘という設定だが、映画の冒頭から丸まる1シークエンス、母となった和子の物語が始まるという構成なのがびっくりさせる。

まずは芳山和子に扮した、安田成美を絶賛します。通常ならば原田知世の登場を墾望する所だろう。誰のイメージの中にも、和子は知世と決まっていて、これは侵し難い聖域ですらある。が、恐るべき事に、安田成美嬢の芳山和子は、あの27年前、深町君への想いを胸に秘め、ゴロちゃんを忘れて空ろなこの世に彷徨い続ける和子の、そっくりそのままのイメージでここに居る。この成美=和子の成功が、この映画の成功に繋がった。彼女の入魂の演技は旧作への実写版のオマージュという奇蹟を実現させたが、それはまた谷口監督の“作劇上の気品”なる、旧作に於けるぼくの演出術の、見事な踏襲に支えられてもいるからだ。かつての登場人物は深町君のケン・ソゴルを始め、少女時代の芳山和子を演じた人も、姿はかつての知世ちゃんとは全く異なるのだが、この“気品”に於いて和子のそっくりそのまんまに見える。和子がその想う人と歩み去る後ろ姿の二人の離れ具合なぞ、失われた27年前が甦る至福の場面だ。実は当時、和子を演じた知世は「何だかポキポキした女の子ですね」と自身ではあまり納得しないような感想を漏らしていたが、27年前の当時だって、こんな古風な少女は居やしなかった。あれは正に、この映画のために人工的に作られた“作劇上の気品”であって、この時代に対する一種の違和感で以てゴシックロマンの如き“殉愛映画”にしたててやろうというのがぼくの狙いであった。今はそういう和子の古風さが微笑ましくもあって、ぼくも昔のファンも、笑いと共に懐かしく、納得。

で、今回の和子の娘あかりはまことに現代の娘で、逞しく野太く描かれて、母の殉愛をより儚くみせてくれるが、この役を演じた仲里依紗がまた“作劇上の気品”の括りの中でまことにセンシティブ。いまどきのアイドルやタレントではなく“女優”を演じていて、これも谷口演出の映画的気品として見事。ぼくはすっかり惚れ込みましたよ。また彼女を巡る“恋人”役や“父親”役の、ここに古典的な8ミリフィルムの物語性を加えた虚実の味わいが、この多くのファンの記憶の中の『時をかける少女』をリメイクするという“危ない橋を渡る”映画作りを、“危ない橋”であるが故にハラハラドキドキさせながら見事な“抒情”を醸造してみせたのは、脚本の功績。この映画脚本の菅野友恵さんは本当に凄い。天才の技です。

昔、原田知世の十五才の春休みにこの映画を撮ってやろうと、28日間の尾道ロケは寒い春で桜の花が間に合わず。病床から抜け出した老合成技師が煙の向こうに桜を咲かせるという奇蹟を実現してこの世を去られた。そんな伝説の映画世界を少女は往く。谷口君の初期の映画をぼくは“ぴあ”で表彰させて貰ったそうだが、時を経ていま新しい才能の結集による『時をかける少女』を見せて貰うのは、ぼくにとってまことに、ぼく自身が“深町一夫”になって殉愛の人たちに逢っているような、至福のひとときでこそあるのでした。この映画のスタッフ・キャストの皆さんに有難うを。昔の『時をかける少女』と二本立てで見たら、きっと凄いぜ!

大林宣彦(おおばやし・のぶひこ)
1938年広島県生まれ。幼少時より映画を作り続けてインディーズ歴60年の映画作家。CMの草創期から、実験映画、各種イベント映像の他、77年の『HOUSE/ハウス』で劇場用映画に進出。古里尾道を中心に“古里守り”映画を製作。『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』などの“尾道三部作”を始め、『ふたり』『あした』『なごり雪』『理由』『転校生 さよならあなた』、最新劇場公開作『その日のまえに』は09年6月にDVD発売。第21回日本文芸大賞・特別賞受賞の『日日世は好日』など著書多数。04年春の紫綬褒章受章。




ページのトップに戻る